資金(ロ−ン)計画の目安



  工事費の全額を現金で支払えるという人はさほど多くはないかと思います。
  通常は自己資金+住宅ローンの借入額=工事費と考えますが、ではいったいどのくらいの金
  額を借り入れれば良いのか?そもそもいくらくらいなら無理なく返していけるのかな?非常
  に気になるところですね。またその検討が、納得と満足のいく家づくりの第一歩だと思います。
  ここでは住宅ローンを利用するうえでの注意点を押さえたうえで、実際にどのような住宅ロ
  ーンがあるのか?どんな借り方・返し方を選ぶべきなのか?を掲載していきます。
  このところ過去最低水準の低金利が続いているネ。住宅ローンを借りる人にとっては嬉しく
  チャンスなのですが、低金利のときには低金利なりのポイントもあるように思います。入居
  後の返済負担で苦しまないためにも、自分達の家族に適した資金計画を10項目を見ながら
  考えていきましょう。

 

1) 借入額の上限は工事請負代金の8割が目安

 住宅ローンを借りて家を建てるといっても、どのくらいの金額を借りればいいのでしょうか?
 工事費の全額を借りることができればとりあえずの自己資金はゼロでも可能ですが、借りたお
 金は返さなくてはならないのも当然。借入額が大きくなるほど入居してからの返済額も大きく
 なってしまいますよね。
 まず覚えておきたいのは、住宅ローンの借入額は「工事請負代金の8割」が目安になると言い
 ます。たとえば2500万円の工事費だとすると、借入額はその8割の2000万円が上限と
 言うことになります。多くの金融機関では、融資(審査)条件のひとつとしてこの「8割制限」
 を設けています。これは工事費の全額を融資すると返済負担が重くなるという理由だけではな
 いようです。住宅ローンを借りるには建てた家を担保とすることが多いのですが、新築住宅の
 担保価値は価格や工事費の8割ぐらいというのが一般的なのだからです。ただし、例外もあり
 ます。まず住宅金融公庫では現在、年収など一定の条件を満たしている人について8割制限を
 臨時的に撤廃していますし、また親の土地に家を建てるようなケースではその土地を担保とす
 ることができるので、工事費の全額を貸してくれる民間ローンも少なくないようです。
 もちろん、自己資金が豊富で「8割も借りる必要がない」というのならそれに越したことはあ
 りません。とはいえ、工事費以外の諸費用も自己資金から捻出しなければならないという点も
 忘れずに慎重な資金計画が必要です。


2)毎月返済額は月収の4分の1以内がベスト
  
 工事費の8割というのはあくまで「借りられる額」の目安で、「返せる額」とイコールではあ
 りませんよ。自分の返済能力を超える金額を借りてしまうと、その後の返済で苦しい思いをす
 ることにもなりかねないので注意をお願いします。
 逆に言えば、ローンの借入額は「返せる額」から計算する必要がありそうです。返せる額がわ
 かれば、そこから借入額を逆算できるので、その借入額が工事費の8割以内に収まるように予
 算を立てれば良い、と考えましょう。
 では「返せる額」はどうやって算出すればいいのか?というと、基本になるのは収入ですね。
 収入に占める返済額の割合が大きすぎると負担が重く感じられます。この点については金融機
 関ごとに基準が設けてあります。たとえば金融公庫では「毎月返済額が月収の5分の1まで」
 と定めています。銀行などの民間ロ−ンでは「年間返済額が年収の40%以内」などと判断し
 ています。
 現実的には収入の40%という負担はやや重いといえますので理想的なのは25%以内です。
 つまり毎月返済額が月収(年収の12分の1)の4分の1以内となるようにローンを組むのが
 ベストといえるようです。(給料40万円ならロ−ン分が10万円以下)


3)各種ローンの特徴をよく理解しておこう

 住宅ローンは大きく分けて公的融資と民間ローンの2つに分類することができます。政府系金
 融機関や自治体などの融資が公的融資/銀行や信託銀行、生保など民間金融機関による融資が
 民間ローンです。
 公的融資としてまず第一にあげられるのが住宅金融公庫による融資です。政府系金融機関のな
 かでも最も金利が低く、年齢など一定の条件を満たせば誰でも利用できるます。半面、対象と
 なる住宅は床面積や建設基準など細かい条件をクリアしなければなりません。融資額は金利の
 低い住宅融資とやや金利の高い特別加算に分かれ、さらに一定の工事などを実施すると割増融
 資が受けられます。住宅融資の融資額は床面積や地域、住宅の構造によって決められ、一定の
 基準を満たした住宅なら最も低い基準金利が適用されます。
 年金住宅融資は厚生年金保険か国民年金に加入している人が利用できる公的融資で、一世帯で
 複数の人が申し込めます。融資額は一般融資と特別融資に分かれ、さらに割増融資も用意され
 ています。いずれも公庫よりやや金利は高めですが、公庫のように11年目から金利がアップ
 するということはありません。
 財形住宅融資は財形貯蓄をしているサラリーマンが対象で、最高4000万円までの大型融資
 が受けられますが金利は変動型しかありません。
 公的融資にはこのほか、自治体が独自に扱う融資もあります。融資条件は自治体により異なり、
 なかには公庫融資よりも金利を低く設定しているケースもありますので調べる価値はありそう
 ですよ。
 一方、銀行や信託銀行、生保などの民間ローンは公的融資に比べて対象となる人や住宅の条件
 が幅広い点が特徴です。金利は変動金利型が中心ですが、一定期間の金利を固定できる固定金
 利選択型もあります。現在は低金利が続いており、公的融資より金利が低いケースも少なくな
 いのでこちらもよく調べてみる価値はありそうです。


4)低金利のいまは固定金利を優先しよう

 住宅ローンには金融機関ごとに特徴があります。では、数あるローンのなかからどれを選べば
 よいのでしょうか。答えは「最も有利なローンを選ぶ」ということに尽きるでしょうね。有利
 かどうかは返済負担で比較することになります。返済負担は返済期間や返済方法によっても変
 わりますが、最も差が出るのは金利でしょう。ただし、単純な金利の比較で選ぶと失敗するこ
 ともありますのでご注意下さい。たとえば最も金利の低いのが銀行ローンの2・6%としても、
 これが変動金利だとしたら借りた後に金利が上下することがあります。とくに今のような低金
 利の時期だと、この先金利がアップする可能性が高いと思われます。その点、金融公庫や年金
 のような固定金利なら今の低金利が返済終了までずっと続き、先が読めると言えます。公庫で
 は11年目から金利が上がるとはいえ、4%と決まっているから安心ですよね。


5)家族に適したローンを選ぶ

 なるべく金利が低く、しかも固定金利のローンを優先するのが低金利のこの時期では鉄則ですね。
 だが、各ローンには融資条件があり、必ずどのローンでも使えるとは限りません。自分が利用で
 きるのはどのパターンか、よくよく確認しましょう。
 まず「公庫+年金型」は最も基本となる借り方です。建てる住宅が条件に合えば、固定金利の公
 的融資をフルに活用したいものです。
 自営業者など国民年金加入者の場合は年金の融資額が少なくなりますので、「公庫+民間ローン
 型」もいいでしょう。
 「年金中心型」はごく限られたケースですね。
 敷地面積が100u未満だと公庫・年金が利用できませんので「財形中心型」や全般に「民間ロ
 ーン型」となってきます。いずれも変動金利がベースとなる点は注意が必要です。なお、地域に
 よっては自治体融資を優先した方が良い場合もあります。


6)年収が足りないときは家族の収入を合算する

 住宅ローンを借りるときには金融機関の定める年収基準をクリアしなければなりません。銀行ロ
 ーンの場合は返済額が収入の40%ぐらいになるまで借りられるのであまり気にしなくて良いで
 すが、問題は金融公庫の融資です。公庫では2)で書いたように「毎月返済額が月収の5分の1
 以内」という基準になっているからです。仮に年収が500万円とすると、ボーナス払いを併用
 しなかった場合の毎月返済額は8万3333円までが限度です。足りない分は自己資金を増やす
 か、ほかのローンで補う必要があります。ただしこの場合、同居予定の家族に一定の収入があれ
 ば、申し込む人の年収と同額まで加えて計算できることになっています。これを「収入合算」と
 言って収入が低くても公庫融資をたくさん借りられるうれしい制度ですね。共働き夫婦や2世帯
 住宅などで活用したいものです。


7)年齢や工法によって返済期間が変わってくる

 返済負担は金利だけでなく、返済期間によっても左右されます。同じ金利でも返済期間が長けれ
 ば毎回の返済額は軽くなるし、短ければ重くなります。毎回の返済負担を軽くしたいと思うなら、
 なるべく返済期間を長くすればいいと言うことです。ただし、返済期間をどのくらい長くできる
 かは、年齢や住宅の工法によって異なります。公庫・年金・財形の場合、年齢が60歳だと一律
 20年以内というように、年齢が高いほど最長返済期間は短くなります。また、60歳未満の場
 合は、木造が25年以内、準耐火構造が30年以内、耐火構造が35年以内となっています。返
 済期間を長くするなら木造でも高耐久仕様やRC造を選ぶと良いでしょう。ただし、返済期間が
 長いとそれだけトータルでの返済総額は増えるので注意したいものです。なお、民間ローンの場
 合は住宅による違いはなく、「最終返済時に満70歳未満」というように年齢による制限がつき
 ますので確認が必要です。


8)高齢での借り入れには親子リレー返済がおすすめ

 公的融資では60歳以上の人の返済期間が短くなるので、毎回の返済負担はそれだけ重くなって
 しまいます。
 たとえば2.75%の金利で2000万円を借りるとすると
 返済期間が25年なら毎月返済額(ボーナス払いを併用しない場合、以下同):9万2260円
        20年では                                :10万8420円
        15年では                                :13万5720円

 老後資金のことも考えるといかにも負担が重いことがわかります。そこで活用したいのが「親子
 リレー返済」です。この制度を使えば申し込む人が高齢でも、同居予定の子供がいずれ返済を引
 き継ぐ場合は60歳未満の人と同じ返済期間でローンが組めます。さらに公庫では一定の2世帯
 住宅を建てる場合に返済期間を40〜50年に延ばせる「超長期親子リレー返済」という制度も
 あります。なお、民間ローンでも同様の商品が用意されているケースが多いので確認してみると
 良いでしょう。


9)返済方法の選択は将来を見据えたうえで

 住宅ローンの返済方法にもいくつかのバリエーションがある。最も一般的なのは、金利が一定なら
 初めから終わりまで返済額が変わらない「元利均等返済」と呼ばれるものです。これは安定した返
 済計画が立てられるが、返済し始めのころは返済額に占める利息の割合が大きくなり、元金がなか
 なか減りません。
 これに対し、元金を一定額ずつ返していく方法が「元金均等返済」です。返済当初は利息が大きい
 ので返済負担も重いですが、返済が進むにつれて利息が小さくなって返済額も軽くなります。元金
 の減り方も元利均等返済より早いです。公庫・年金・財形では元金均等返済も選べるので、余裕が
 あれば検討する価値はありますね。
 逆に返済当初の負担を軽くする方法が、公庫の「ゆとり返済」や年金の「ステップ返済」です。
 いずれも当初5年間の返済額を「50年返済」で計算してくれます。ただし、当初の負担を軽くし
 た分、6年目からの負担は通常返済よりも重くなってしまうのでご注意下さい。将来の収入が確実
 にアップする見込みのある人向きと言えますよね。サラリーマンならボーナス払いを併用するケー
 スも多いです。ただし、ボーナスは景気動向に左右されやすいので頼りすぎは禁物です。ボーナス
 払い分の借入額は全体の2分の1までという金融機関が多いですが、毎月払い分とボーナス払い分
 の比率は6対4ぐらいにとどめるべきだと思います。


10)民間ローンなら返済期間を長くできる

 住宅ローンの返済期間は住宅の工法にも左右されると書きましたが、これはあくまで公的融資での
 話しです。民間ローンの場合はこうした制限はなく、木造でも30〜35年の長期返済が可能です。
 25年返済と35年返済との差は大きいですよ。2.75%で1000万円借りたときの毎月返済額は
 、25年返済だと4万6130円だが、35年返済では3万7100円まで下がります。さらに
 2.625%の銀行ローンを変動金利で借りると、35年返済で3万6420円ですみます。返済額が
 低ければ同じ年収でも借入額を増やすことができるということです。
 ただし、変動金利は金利が上がる可能性を否定できませんね。返済期間が長ければトータルの返済
 額も増えるという点にも注意を払うべでしょう。基本的には公庫・年金を優先しながら、銀行ロー
 ンのメリットも生かすようにしたいものですね。

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