通風について


 最近は高気密・高断熱性の高い住宅が良いと言われるようになってきましたね。
 その一方で室内環境は、ついつい人工的な空調に頼りがちです。
 ところが快適な自然の風こそ、住宅や人自身の健康維持に重要な役割を果たしてくれます。
 ここでは外の風を上手に取り入れるポイントや工夫について記載し、設計段階からの
 いろんな方法を提案しています。


 1) 現代住宅における換気・通風の効用とは

    1. 住宅の健康を守ります。==住宅の寿命にも大きく関わります。 

       住まいの敵である湿気を防ぎ、ダニ・カビの発生を防ぐため、特に以下の部分は注意必要!
         ・居室の通風
         ・納戸や押し入れなど収納場所の通過
         ・屋根裏や床下などの通風

    2.自然の涼を楽しめます。==皆さんもご承知、これは気持ち良い!

 2) 効率のよい通風のための基本

   住宅では、空調や換気扇に頼る前に、自然の風を上手に取り入れることが基本ですね。
   しか し、大きな窓があっても、風が通らないこともあります。自然の風を効率よく
   取り入れる ために、風の入口と出口をきちんとつくることを考えましょう。
   以下は効率のよい通風のための基本です。
   
    1.出口と入口の2カ所が必要
    2.開口部は向かい合わせがベスト
    3.お互いの開口部は高さを変えると風がよく通る

 3) 住宅の健康維持に役立つ通風

   木や土、紙だけでできていた昔の住宅と違い、現代の住宅はアルミサッシや断熱材
   などを使い、優れた気密性を実現しています。冬温かい家は、ありがたいことこの
   上ありませんが、心配なのはカビやダニといった 『住まいの敵』の問題です。これ
   らは大切な家を汚し、むしばむだけでなく、鼻炎、喘息など、人間の病気の原因にも
   なる厄介な存在です。

  ● ダニの繁殖の条件

   ダニの繁殖条件をみてみると、室温20〜30℃、相対湿度60%以上となっています。
   つまり 梅雨のころには、どうしてもダニの繁殖に適した条件が整ってしまうのです。
   ちなみにダ ニが不潔な場所を好むのは、食物のクズや人間のアカ、フケなどをエサに
   しているからで す。

  ● カビの発生条件

   カビの胞子は空気中を浮遊し、温度・水分・栄養の3条件がそろえば発生します。最も
   発生しやすいのは室温20℃前後、湿度80%以上で、有機化合物、炭水化物、脂肪類、
   無機物 などを栄養としています。湿気や結露が原因となって、浴室、トイレ、北側の
   部屋の隅や 壁、押し入れ、家具の裏などが発生しやすい場所です。
   プランニング、結露しにくい壁の構造、防水などに配慮するのはもちろん、毎日の生活の
   中で換気や風通しを十分に行い、こまめに掃除することが、ダニやカビを防ぐ最善策です。

 4) 効率のよい換気と通風

   換気とは、汚れた空気を排出し、新鮮な空気を取り入れることです。その際、湿気も一緒
    に排出されますので、建物の健康維持(防ダニ、防カビなど)に重要な役割を果たします。
   また、建物の内部にこもった熱も排出してくれます。

  ● 効率のよい換気・通風

    ・ふたつの窓を対面させる
    
     前にも述べたように、効率のよい換気の基本は入口だけでなく、きちんと出口をつく
     ることです。入口だけでは、いくら大きな窓でも通風の助けにはなりません。出口に
     なる窓は対面する位置にあるのがベストです。また窓と窓の距離が離れていればいる
     ほど、風は大きなうねりになります。

    ・風の流れを上下に
    
     開口部を設ける時、一方を高く、他方を低くすると風は通りやすくなります。上下の
     位置関係で、3方に開口部を取ると、温度の高い空気は上のほうから抜け、床の上を
     滑るように抜ける風は、床や畳の湿気を取り去ってくれます。
     開閉式のトップライト(天窓)は、明かり採りだけでなく、通風口としても貢献してくれます。

    ・片側にふたつの窓を設けるのなら高低差をつける
    
     条件によっては、片方にしか窓を取れないという場合もあります。その時は、床に近
     い低い位置と天井付近に開口部をつくることで、風の流れを起こせます。

    ・建具を工夫する
    
     浴室、納戸など特に通風に気を付けたい場合には、ガラリ付きの建具などを用いて、
     より風通しをよくしましょう。
     また勝手口のドアにも、換気しやすいタイプのものがあります。丈夫な格子付きなら、
     カギをかけたままでも換気ができ、窓以外の通風口がひとつ余分に確保できます。

 5) 通風を助ける仕掛け

  ● 配置と間取り

    現代の過密な住環境では、十分な通風を期待することは困難な状況にあります。家を敷地
    いっぱいに建てざるをえないことも多く、隣家と近接しているために、窓の位置が自由に
    ならない場合もあります。また道路に面した窓は、防犯上やプライバシーの問題から、開
    けられないというケースもあるでしょうね。
    それでも、できる限り効果的に自然の風を取り入れるために、配置や間取りで工夫したい
    ものです。庭や駐車スペースなどをうまく配置して隣家との間離を広げたり、また中庭を
    設けると、通風に役立ちます。中庭を設けて、通風や採光を得ることも考えられます。ま
    た、水平方向ばかリでなく、吹き抜けや階段室などによって、垂直方向の風の流れをつく
    ることも考えましょう。開放しにくい場所の窓でも、外部に樹木を植えて目隠しをしたり、
    ルーバー窓を用いて風を取り入れることもできます。室内のドアはガラリをつけるなどし
    て、廊下を介して通風を取るとよいでしょう。

  ● 通気口

    また通風は窓によるばかりではなく、通気口も効果的です。床下・屋根裏はもちろんのこ
    と、室内に設けることもあります。屋根裏や天井近くの高い位置の通気口は、排熱にも有
    効です。ただし、夏と冬で開閉をコントロールできるよう考えておくべきでしょう。

  ● 収納スペース

    納戸やクローゼットなどが、家の中の風を遮る位置にある場合があります。収納している
    物のためにも換気は必要ですし、家全体の風の通り道を考えて、窓やガラリ戸をとりつけ
    ましょう。
    気密性の高い現代の住宅に、換気はとても大切です。風通のよい家ができたなら、毎日の
    生活の中で、こまめに窓を開けて新鮮な空気を取り入れることを心掛けましょう。


  ● 床下

    床に開口部をつくり、昔の人が楽しんでいたような自然の風を床下から取り入れてみては
    いかがでしょう。居間の床のコーナーなどに通気孔を設ける方法です。この時に注意しな
    ければならないことは、床下の処理です。基礎の内部の地盤面にコンクリートを打って、
    土の臭いや湿気が室内に流れこまないようにします。防虫の網を通風口に付けることも
    忘れずに。冷房を入れるのにはちょっと早い時期、床下の冷たい風が涼を運んできてくれ
    ます。  もちろん開閉式にして冬場の対応も必要ですがね。

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